小説

『豆の行方』多田正太郎(『追儺』森鴎外、『ジャックと豆の木』)

 隠蔽。
 この点に関しては、人間の歩みの中で、決して、途切れたことなど、なかった。
 と、男は思った。

 なんで、こんなことに、なったんだろう。
 いまさらも、いいとこだろうが!
 とにかく、食いたい! 食いたい!
 まったく、それ以外。
 滑稽だ。
 フライドチキンと、冷たいビールを、たらふく腹に流し込んだのは、ついこないだ、だ。
 な、な、そうだったろ。
 それが狂ったのは、どこからなのだろう?

 男は、思い出していた。
「豆」。
 この題名にこだわる人物からだ、という。
 短編映画の、原作の依頼。
「ジャックと豆の木」を巡る、ドキュメンタリー。
 その番組の、シナリオ構成の依頼。
 二つ、抱えることとなった。
 仕事が重なるなんて、奇跡に近い。
 だけど「豆」。
 なんとなく気が乗らなかった。
 いや、身震いのような、寒気のような、そんな感じのものを、吹きかけられるような。
 そんな、気配を感じた。
 なんで「豆」なのか?
 どちらの依頼も、唐突だった。
 強い思い入れ。

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14