小説

『豆の行方』多田正太郎(『追儺』森鴎外、『ジャックと豆の木』)

 自分の死を、納得していたのか?
 寝付く前の、わずかな時間。
 なんの脈絡もない。
 ジャックの父親の死。
 それが、どんな、どんな、どんな・・・。
 と、理由もなく、引っかかったのだ。
 童話だろ。
 お前、バカか・・・。
 記憶に残っているのは、このあたりまでだ。
 目を覚ましたら、ピッタリ正午だった。
 尿意がなかったら、まだ眠り続けていた。
 まだ、眠りたい。
 と、男は思った。
 もやもやしつつ、パソコンを立ち上げた。
 「遠い昔、スコットランドの屈強な男達は、自ら兵士という名の輸出品となったんです。
 この男達と、バグパイプは、切り離せない、繋がりがあるのです。
 戦意高揚で、先頭に立って演奏するパイパーは、武器をもてません。
 最初の標的となり、消えていく。
 次々と。それは大変な名誉だったんです。
 家族に、食べ物を、もたらすためにとる、男の、最高の行動だったのです」
 バグパイプにまつわる、厳し歴史。
 気付くと、DVDを見入っていた。
 こんな、言い伝えは、まだましだ。
 語られる、中身が、あるのだから。
 家族を、守ったという。
 自分の死と、引き換えにだ。
 食い、食わせた。
 それが、哀れな死で、あっても、だ。
 物語を、語れたのだ。

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