小説

『それはズルい』真銅ひろし(『蜘蛛の糸』)

華奢で色白、艶のある長い髪、切れ長で淀みのない瞳、背は160位だろうか、隙のない凛とした姿、見ているだけで癒される存在。
 それが清華麗子だ。
 キヨハナレイコ、名は体を表すとはよく言ったもので、全く名前負けしていない。
「ねぇ麗子、昨日のドラマ見た?」
 クラスの女子が昼休みの時間に清華を囲んで話している。
「ううん。見逃しちゃった。」
「ええ~超もったいないじゃん。今回ヤバいよ。」
 盛り上がっているのを眺める。
「・・・。」
 羨ましい。超絶に羨ましい。清華に話しかけるのは女子しかいない。男子は用がなければ遠巻きにしか見ない。たぶん恐れ多いと感じているのだ。軽々しく話しかけてはいけないオーラを彼女は身にまとっている。
 じゃあ、本人は男に冷たいのか?
と言えばそうではない。清華は話しかければ誰にでもにこやかに答えてくれる。ただ自分から男子に話しかける事があまりないと言うだけだ。
 彼女と付き合ってみたい。
 このクラス、いや、学年、いや、学校中の男子が一度はそう思ったのではないだろうか。同じクラスになっただけでも自分はラッキーなのかも知れない。
「清華ってどんなのがタイプなんだろうな?」。
 柴田が食後のカフェオレを飲みながら聞いてくる。
「何回その言葉言ってんだよ。気になるんだったら聞いてくればいいじゃん。」
「霧島、お前聞いてきてよ。」
「ふざけんな、何で俺なんだよ。」
「いいじゃん、中学からの付き合いじゃん。それにお前だって聞きたいだろ?」
「・・・。」
 そんな事ねぇよ、とは言い返せない。
「女子に聞いてもらえばいいじゃん。」
「そんなのとっくに聞いてるよ。だけどなんか清華の事になるとガード固いんだよな。」
「・・・。」
 なんとなくは分かる。守りたくなってしまう存在ではある。

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