『恋人がゾンビになってしまったら』
乘金顕斗
(『山月記』)
もし恋人がゾンビになってしまったら、なんて想像、したことなかったけれど、修ちゃんがゾンビになってしまった今、改めて想像してみるとして、それならもっとこう、なんていうかな、それっぽい感じがあったんじゃないかと、ゾンビになった彼を見て私は思う。
『ある山月記 変わらない二人』
立原夏冬
(『山月記』)
ある山の中、袁傪は、若いころ都で役人としてともに働いていた李徴と再会する。李徴は虎と化した我が身を嘆くが、袁傪には人の姿のままとしか見えない。思い違いだと伝えようとする袁傪に対し、李徴は一向に聞く耳を持たず、ついには四つん這いになりあたりを駆け回り始めるが…
『小さな世界の姫と太郎』
春野萌
(『浦島太郎』『かぐや姫』)
グループからはじき出された亀ちゃんを救った縞子(しまこ)はクラスの中心人物、愛都(おと)のターゲットとなり教室へ行けなくなってしまう。SNSアプリ、玉手箱が受信するメッセージも開けられないまま登校した特別室で、不思議な雰囲気を持つ佳久耶(かぐや)と出会い穏やかな時間を過ごしていく。
『この世でいちばん』
霜月透子
(『白雪姫』)
幼いころ、私たちは仲のいい美人親子と評判だった。しかし、年を重ねるごとに私は大人びた美しさになっていき、母は老いの片鱗が見え始める。そのころから母は私をあからさまに敵視するようになった。家に居づらい私は公園で過ごすことが増え、そこで一人の青年に出会うのだった。
『ゼペット爺さん殺人事件』
五条紀夫
(『ピノッキオの冒険』)
東京郊外の民家にて一人の老人が殺害された。就寝中に鋭い凶器で胸を一突きされたことによる失血死だった。室内に荒らされた様子はなく、怨恨による犯行との見方が強い。しかし犯人を示す物証は何もなかった。唯一の手掛かりは一人の、いや、一体の、木の人形のみ……。
『ベッドの上の攻防』
のらすけ
(『ヤマタノオロチ』)
妻が買い物に出かける間の2時間。父親である俺は1歳に満たない娘の世話をひとりですることに。熟睡をしていた娘だが、途中で目を覚まし、怪獣を化す。その事態を想定していた俺は、事前に準備を整えていた策をもって、その怪獣と対峙する。怪獣の猛攻を全身で受け止めながら奔走する。
『レモン味の』
斉藤高谷
(『檸檬』)
前の席の机に置いたレモン味のアメを見つめるモトコ。彼女にはある目的があった。一方、置かれた席の男子・丸山は突然のアメの出現に戸惑う。彼にはアメに対する苦い思い出があった。
『隣の惑星』
夏川冬人
(『静かな湖畔』)
山の湖畔に住む家主は泉と共に暮らしていた。ある日、ふとした事で日常に変化が起きた。同じ山に暮らしていながら、変わっていく者と、変われずに置き去りにされる者の行方は。
『こんがらがった線』
いいじま修次
(『金色の糸と虹』)
イヤホンのコードや釣り糸など、絡まったものをほどく事に悦びを見付けた少年は、成長を続けていく内に思考や感情など、物質以外もパズルのようにほどき始める。