『古びたゴール』
大村恭子
(『わがままな巨人』)
2週間入院していた「私」が久しぶりに自宅に帰ると、庭にある古びたバスケットボールを囲って近所の子供達が勝手に遊んでいた。子供達を追い出したもの、その後毎晩、嫌な夢ばかり見てしまう「私」。しばらくして、再び庭で遊び始める子供達。そんな中、一人の少年が目につくようになる。
『年金生活のすすめ』
千田義行
(『パンドラの箱の物語~ギリシア神話より~』)
老々介護の末母を亡くした私は、ようやくひとりの気ままな年金生活を始められるとせいせいしていた。母が残したものはガラクタばかりで、大事にしていたジュエリーボックスの中身は、なぜかレシート一枚だけだった。四十九日も過ぎ、分かってきたことは、ひとりの生活の絶望的な孤独だった。
『金の生る木を植えた男』
紀野誠
(『木を植えた男』)
急に友人が金持ちになった。秘密を尋ねると『金の生る木』を手に入れたという。友人から譲られた種を育てると、本当に日本円の実を成す木が生えてきた。男は全財産を投入し、人目を避けた田舎で本格的な『金の生る木』の果樹園を始める。
『おにぎりのむすび』
前田倫兵
(『おむすびころりん』)
大学生の大地、康之、健一は来月に学園祭を控えていた。そこで三人は彼らが開催する『おにぎり祭り』に出品するおにぎりの開発を始める。
おにぎりを作った三人は、大地の家の『裏』の住人の門脇さんなる人へアドバイスを求めるも・・・・・・。
『河童の川野君』
裏木戸夕暮
(『河童』)
小学五年生の夏。遠泳大会で溺れた私はクラスメートの川野君に助けられた。御礼を言いに行った私に川野君は、自分は河童の子孫だと打ち明ける。
『夏の雪を買いに』
若松慶一
(『手袋を買いに』)
手ぶくろを買いにで登場した狐の親子。あの物語では、母さん狐は人間が怖くて町に入れず、代わりに子狐に一人(一匹)で手袋を買いに行かせました。今度の物語では、熱が出てしまった子狐のために、母さん狐が勇気を振り絞って人間の住む町に、ある物を買いに出かけます。
『ロングロングステイステイスイートホーム』
もりまりこ
(『シンデレラ』)
ぼくはあの長いステイホームの前からもずっとひきこもっていた。カウンセラーの八島は新しい靴を買えと言う。バカな話だと思っていたらある日家の前に靴が置いてあった。その日を境に靴が時々、置かれるようになっていった。
『もしわたしがいなくなったら』
立原夏冬
(『雨月物語』より「浅茅が宿」)
新種の感染症が流行し外出自粛要請の出る中、出張から帰宅した真一は、家の雰囲気に違和感を覚える。寒い風呂、味のしない食事、なにより妻の桜の様子がどこかおかしい。真一は桜の体調を気遣うが、桜は急に泣きだし、信じられないことを口にした。
『犬を一匹』
樋渡玖
(『花咲か爺さん』)
隣人の老夫婦は犬を飼いだしてからおかしくなった。
犬を『神の使い』だと信じ、犬の指示の元に穴を掘るとお金が出てくるというのだ。あまり関りにならないようにしようと思っていた時、その犬が交通事故にあって……。