車は二十分程で展望台に到着した。
「あれ、丸いマークが出ない。ここじゃないんだ」
それでも僕たちは車を降り、絶景を見ながら二人で作った弁当を食べた。
「この後どうする。十分楽しめたし、戻ろうか」
「え、まだ目的地に着いてないんでしょう。行ってみようよ」
紬の一言で、ナビが示す方向に行くことになった。車は県境を越え、小さな町の中を走っていた。しばらくして、
「翔くん、丸いマーク出たよ。えーと、三百メートル先を左、そしたら百メートルくらいで目的地だよ」
そこは、小さなスーパーの駐車場の中にあるチャンスセンターだった。
「え、ここが目的地なの」
紬がそう言うのも無理はない、僕もそう思った。そして適当な言い訳を探していた。
「うーん、ナビが故障しているのかな」
「そうなの。折角だから記念に宝くじ買って帰ろ」
紬は、さっさと車を降り、宝くじを一枚買ってきた。
「翔くん、一等が当たったらどうする」
「そうだな、このゴミ車を買い替えようかな」
「この車、私のお気に入りなのに。それに、この面白いナビも」
「えー、ゴミ車って言ったのは紬だよ。それにしても結構遠くまで来ちゃったな。なんだか、同じ道を引き返すのが億劫になったよ。でも、この辺りの土地勘無いし」
「だったら、このホームってボタン押してみたら」
「そうだな」
僕は、そう言ってから、あのことを思い出した。そして『しまった』と思った時には、もう紬はスイッチを押していた。
「ねえねえ、なんだか『さようなら』って表示された気がする」
この時僕は、もう二度と『行きたいところ』は表示されないような気がしていた。そして、僕の予感は的中した。