小説

『ナビの恩返し』戎屋東(『鶴の恩返し』(全国))

 僕は、スマホで当選番号を検索した。
「じゃあ、一等から読み上げるよ。一桁目は6」
「翔くん、すごい。一桁目当たっている」
「すごいな、元が取れた。じゃあ、続けて読むよ」
 僕は、八桁の番号を続けて読み上げた。
「ちょっと待って。もう一度読んで、一桁ずつ、ゆっくり」
 二人で何度も確認した。声を出して一桁ずつ確認した。宝くじの種類や発売日も確認した。それでも一等が当たっていた。
「こんな事ってある」
 二人揃って少なくとも一時間はポカンとしていた。そして、その時僕は思っていた。
『絶対に間違いない。これはきっと、ナビの恩返しだ』

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