決戦場所は、中央公園の陸上競技場だった。
サーキットの貸し切り。観客席には誰もいない。
わたしは画面越しに二人の戦いを観察している。兄さんもきっと一緒だ。
ツインはスポーツウェアに身を包み、決戦を前にストレッチを繰り返している。
相手、兄さんを模した【エズラ】という名前のツインも同じように準備体操をしている。
やがて、時刻が近づき、二人のツインはスタートラインに並んだ。
「ねえ、緊張している?」
〈当たり前でしょ。超負けたくないし〉
ツインは、スタンディングスタートの格好をする。
そして、時間が来る。スターターピストルの音が鳴り響く。
先行したのは、兄のエズラだった。かなりトレーニングしてきたのだろう、わたしが知っている兄さんよりも、身体が引き締まり、小麦色に焼けていた。
やはり兄妹であることが影響しているのか、二人ともストライド走法。
一キロを超えた時点で、三メートルほどの差。
ツインはぴたりとエズラの背後に。
二キロを超え、ツインはカーブでピッチを上げて、エズラの脇を抜けようとする。
エズラの表情が一瞬歪むが、ツインは一気に抜き去った。
「よっしゃ」わたしは思わず画面前でガッツポーズ。「いいよ!」
兄さんはどんな表情をしているだろうか。三キロを過ぎて、五メートルほどの差になる。
このまま逃げ切れば。
握っている拳の中で汗が滲む。
五キロを過ぎた頃、天候に変化があった。一気に雷鳴を響かせる黒い雲がワイトシティの空を覆い始めた。