小説

『イマージナリー・エネミー』平大典(『撰集抄』(和歌山県))

 ツインに対するライバル意識が、どんどん切実になっていく。
 彼女の一挙手一投足が現実のわたしに対して、示唆的になっている。まずい。
 そんなものは、もののかんがえようという正論もあるが、わたしはこういったリアルなシミュレーションを気にする性質なのだろう。こんな調子では、ツインと会話するのもなんだかおっくうになってくる。
〈ねえ、最近気になっているヤツがいるんだよね〉
 ある夜、ツインから突然の告白があり、わたしは身構えた。
 わたしは遠距離のパートナーとまともに連絡さえできず、ツインにも教えていなかった。
「どんな人?」
〈一緒のジムにいる奴なんだけど。なんかいっつも同じ時間にやっていて、わたしの隣でトレーニングしてくるんだよ。なんかうっとしいんだ〉
 わたしの想定とはちょっと違う。
「無視すればいいんじゃない?」
〈なんか、そうもできなくって。一応、会話とかID交換とかはしているんだけどさ〉
「ふぅん。そいつの顔は分かる?」
〈うん。今、送るね〉
 ツインから、イラつく相手に関するID情報や写真画像が送られてくる。
 見覚えがあった。
 兄さん。だった。
「ほんとに、この人?」
 ややこしいが、マイ・ダイブに登録した際に、ツインの兄さんとは血縁関係の設定を加えていない。
〈そうだけど〉ツインがわたしをじっと睨む。
「ふうん」
 そして、ツインが告げた。
〈この人と、来週の土曜日、10キロマラソンで勝負をすることになった〉

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