家に帰ると、わたしはワイトシティにいるツインをコールした。
〈どしたの、アサコ〉
「あの、ちょっと一勝負どう? バーチャルボクシング」
〈いいよ〉
「よっしゃ」
天井のプロジェクターから、等身大のわたしのホログラムが投影された。デジタルだと大小のサイズ変換も可能だ。
ツインは、ノースリーブのトレーニングウェアを纏っていた。グローブの色は赤い。
現実のわたしもジャージに着替え、専用のボクシング・グローブを腕に装着する。
〈準備はいい?〉
「オッケー」わたしも構える。
リビングにゴング音が響く。
先制はわたし、右フックを繰り出す。
あれ?
その一撃は、大きく空を切った。
左に回り込んだツインが、わたしの左わき腹に一撃。
クリーンヒット。
それからだってひどいものだった。わたしは、結局一発しか当てられなかった。
二分経過でスタミナが切れ、息も絶え絶え。
ツインのわたしは、心肺機能もリアルに再現している。判断能力も近いもののはずだ。
普段からの運動量の差、なんという屈辱感だ。