小説

『27の香水』Rin(『とおりゃんせ』(福岡))

「きょうなにふる?」
「うーん、あ!こうふいみにいきはい!」
「え?はんて?」
「香水見に行きたい!」
口を濯いで冷水で目を覚まさせ彼の方を向く。
「いいじゃん、天神行く?」
「うん!本当はこうちゃんと再開した時、香水見に行こうとしてたんだよ」
「あ、そうなの?なのに俺ら麻婆豆腐行っちゃったのか笑」
「そう笑」
「じゃあ香水買ってお詫びしないと笑」
「え、ほんと?」
「うん、今日誕生日でしょ?プレゼントさせてよ」
「やった〜!高いやつにしよ!」
「こいつ笑」
捕まえようとする腕を華麗にすり抜けクローゼットの方へと向かう。
「早く準備してください〜笑」
「はいはい〜笑」
服を着替え香水に手を伸ばしたところで止まり、かけずに玄関で待つ彼に合流した。

「そういえばさ、この曲が流れる信号って減ったよね」
天神にある百貨店通りの十字路、青信号の音が今日は妙にクリアに聞こえる。
「たしかに、とおりゃんせ、だっけか?」
「そうそう、今はほとんど盲導鈴に変わったから」
「童謡って怖い意味のやつ多いよな、実は」
「やめてよ〜、もう!早く行こ!」
ニヤニヤとこちらを見る彼の背中を叩き、腕を絡め百貨店へと入っていく。

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