「あ、あの女の子の横顔の写真……」
彼女は嬉しそうな表情になって、
「あ! あれ、私が撮ったんで」
「え」
予想外の返答に、言葉に詰まる。何を言おうとしていたのかも分からなくなった。
「ええ写真やなと思って」それだけ口にする。
「ありがと。これ、明日の写真展に出すんよ」
「明日?」
今日は土曜日。一般公開のない我が校の文化祭は一日で終わりだ。
「今日終わってから運ぶん?」
「いやいや、絵とちゃうけん。同じのをもう運んどる」
なるほど。
概要が分からないので、「いい賞取れるといいね」などとも言えず、
「頑張って」とだけ言う。
「ありがとう」と彼女は微笑む。
次の日も、振替休日の月曜日も、私の脳裏にはあの写真がちらついていた。
あの写真は何なのだろう。あの写真部の子が、泉にお願いしたのだろうか。傷を撮らせて、と? あり得ない、と思う。そして、タイトルは『いま』。どういう意図なのだろう。泉の意志が反映されていたりするのだろうか……。
詮無いことだと思いつつ、どうしても考えてしまう。
そんな週明け、火曜日の放課後、私は件の写真部の子が、エントランスの脇に例の写真を飾ろうとしているところに出くわした。
「あ」階段を降りてきた私と目が合う。私のことを覚えてくれていたようだ。
「その写真……」
「そう、これな、写真展で賞もらったんよ。ほなけん、ここに飾っときって先生に言われて。本人にもさっき許可取りに行ってきたんで」