先生が説明するのを聞いている時、私の頭の中では色々な考えと感情がぐるぐると回って、上下の間隔すら見失いそうになっていた。
「でな、泉は誰も悪くないって言いよんやけど、別の事言う子らもおってな。葵に話聞かないかんってなったわけや」
――誰も悪くない?
「その子らの言いよるのが多分正しいです。私が突き飛ばしました」
そのつもりはなかった、というのは、言い訳じみていて言えなかった。
「何があったんや」
「分かりません」と答えた。正直に。
先生はしばし唸った後、
「謝りたい気持ちはあるか? 泉は、そんなんじゃないって言いよったけど、葵としてはどうなんや?」
先生は、双方が納得しない謝罪に意味はないと考える人だった。
「分かりません」私は繰り返す。
先生は難しい顔をして、
「しばらく君らの様子は見させてもらうけど、言いたいことが出来たら言うてくれ」
土日を挟んで登校してきた泉は、右のこめかみ辺りにガーゼを貼り付けていた。
私は目をそらす。目は合わなかった。
クラスメイトたちが彼女へ心配の声をかける。
泉は明るく応える。
私は机に突っ伏し、外界をシャットアウトする。
泉の友達たちから何らかのアクション、あるいは攻撃があると思っていたが、何もなかった。あって当然とすら思っていたのに。泉が止めたのか、何か思うところがあったのか。