通じてくれ。祈るような気持ちで力をこめる。
竜宮の揺らぎが止まった。
「通じましたよ、芦原さん!」
「ああ」
有頂天になった俺の眼裏に浮かんだのは、珠子の顔だ。「あなた、やったのね」
しかし直後、俺たちは凍り付いた。
美しい建物におよそ似つかわしくない、砲台が現れたのだ。
珠子と似ている、と思った。嫋(たお)やかな容姿にそぐわない舌鋒。ひとたび口を開けば、火を吹くごとくだった。
「逃げます!」
家永が慌てて操縦桿を操作する。
そう早く逃げられるわけはない。
その時モニターを何かが過った。海亀だ。このままでは、コイツも巻き添えを食ってしまう。俺は潜水艇のアームを伸ばした。
「放っておきましょう! その亀はおかしい! こんな深いところまで、来るはずがないんだ」
家永を無視してアームで亀を押しやった。
次の瞬間、光の洪水に包まれた。
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