妻は手を前に出す。少し恥ずかしかったが、ブランコを降りて手をつないだ。久しぶりにつないだその手はとても柔らかく、そして寒空の下だったからとても冷たかった。
「あのさ、聞いていい?」
「なに?」
「・・・俺と結婚して幸せ?」
この言葉に妻は目を丸くして、大きく笑った。
「そんなにおかしいかな。」
「おかしいに決まってるじゃない。今までで一番面白いわ。」
ケラケラと笑い続ける。
「そんなに笑わないでよ。」
「いいじゃない。お笑い芸人なんだから。」
「笑われるのと、笑わせるのは違うの。」
「そうね、ごめんなさい。」
妻は笑いを堪えて、自分を落ち着かせるように、一呼吸置いてからゆっくりとこちらに体を預けて来た。
「ちょっと、ちょっと、どうしたの?」
「いいからちょっとこのまま。」
今更胸が高鳴ったりはしないが、妻の行動にどう対処していいのか戸惑った。そして少しの沈黙が流れた。風の音、木の葉が揺れる音だけが聞こえてくる。