しばらくすると、突然パチリと美香は目を見開き、大きく伸びをした。
「よし!充電完了。ごめんね、心配かけて」
「ごめんねって……。なんでこんな所に一人でいるんだよ。それに何だよ、充電って」広太は何から聞けば良いか訳がわからず、言葉が散乱する。
「満月の夜に時々こうして、竹藪に充電しにくるの。いつもは夜中にこっそり抜け出してくるからバレなかったんだけどなあ。とうとうバレちゃったかあ」
「だから、充電って何なんだよ」
「ああ、それはね……」
美香は月明かりに手をかざしながら、ぽつりぽつりと話しはじめた。
「私、自分がどこでどんな風に生まれたのか知らないんだよね。生まれてすぐに保護されて、今の父さんと母さんに育てられたから。産みの親に捨てられたのよね、きっと……。でも、父さんと母さんがね、美香は決して捨てられたんじゃない、母さんたちにとって特別な子なんだよって。もしかしたら、美香は竹から生まれたかぐや姫かもしれないねって、すごくすごく大切に育ててくれた」
「美香がかぐや姫……?」
もし美香が本当にかぐや姫だとしたら、いつもの無茶振りのワガママも頷ける。
「母さんたちには申し訳ないけど……もし私が本当にかぐや姫なら、いつかきっと月からお迎えが来るんじゃないかって、満月の日は幼い頃からいつもをワクワクしてた。母さんたちが私のためについてくれてた嘘だって、わかってるんだけどさ。でもね、不思議と竹に触れると落ち着くの。だから時々こうして、満月の夜に自分を充電しているの」