小説

『月と満ちる』ヤマベヒロミ(『竹取物語』)

「自分を充電……」
 広太は相変わらず、気の利いた言葉が出てこない。
「でも、もう大丈夫!たっぷり充電できたから。さあ、帰ろう。ああ、やだなあ。父さんたちにめちゃくちゃ怒られるだろうなあ」
 美香は浴衣についた砂をはらい、竹藪の外へ歩き出した。

「あのさ、今度充電しにくる時は俺も呼んで」
「え、なになに。何か変なこと考えてなーい?」美香がおどけて広太の顔を覗き込む。
「そんなわけないだろう!女の子が一人で夜に竹藪って、普通に危ねえだろ。それに……」
「それに?」
「いや、ともかく心配だから!」

 それにー
 もし美香が本当のかぐや姫だったら、月からお迎えが来てしまったら大変じゃないか。

「ああ、足いたーい!下駄で皮めくれちゃった。広太、おんぶしてー!ね、お願い!」
「えー、マジかよ!しょうがないなあ」
 これからも、美香の無茶振りのワガママに付き合うしかなさそうだ。 広太は美香をおぶり、夜空を見上げた。満月が二人を見下ろしている。

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