状況が呑み込めていないのは、私だけなのだろうか。青年と猫はあーだこーだと何かを離しているようだった。当然、彼らの話など耳にも入らなければ頭にだって入らない。
数分後、茫然としている私に気付いた青年と猫は、こちらを向いた。
「ああ、待たせて悪いな。腹減っただろ」
「すぐに準備出来ますんで!」
そう言って猫は軽々と男性を持ち上げ、私の目の前にある皿の空いたスペースにその男性を盛りつけた。そして、ワゴンの下の台から小さな壺と刷毛を取り出し、壺の中のクリームを男性に塗りたくっていく。
「このクリームはですね、この山で採れた新鮮なハーブを使った特性クリームなんですぜ。こいつがまた人間の肉に合うんですよ。ハーブの効果で、固くなった肉もやわこくなるんです。あ、食べる時は付け合わせの野菜も一緒に食べると、後味がさっぱりして美味いですよ~!」
「あ、あの」
「そのクリーム、中々のもんだぜ。俺も気に入ってんだ」
「ひ…」
私は、がたがたと震え上がる。冷や汗が、滝のように流れる。
「ほら、一口食ってみな」
「あ、あ、あ…む、無理だよ君。わた、私は、人は、食べないんだ…」
「へえ、好き嫌いはいけませんぜお客さん。あ、もしかしてサラダが苦手でしたかい?そんなら、火を起こしてフライにしてさしあげやしょうか!」
「い、いや…その…」