小説

『スサノウの夏』添谷泰一(『古事記の八俣の大蛇』(島根県))

 郷土芸能部の部室は、石州和紙と竹で作った大蛇の蛇腹胴体で埋まっていた。部員三人で大蛇を動かし、二名で演奏していた。なんとも貧弱な舞。そこに、雪乃が二名の男子を連れて来る。「新入部員を連れて来た」。連れてこられた男子が言った。「あれ? アイドル系の女子部員がたくさんいるっていうのは?」。と、怪訝に聞いた。それに、雪乃が答える。「私と、亜紀ちゃんと、舞。複数のアイドル系女子部員」。男子生徒「騙された」「ブス」と言って、出て行った。部員たち、深いため息。そこへ宮田先生。「おう、新入部員連れて来たぞ」と言って、四名を紹介する。部員たち、目がテン。何と、四人ともご老人なのだ。「今年は老人会とのコラボだ。キャストで老爺、老婆をやってもらおうと思っている。それから、小太鼓と銅拍手。皆、拍手!」。力ない拍手。宮田先生「この方々は我々の先輩。つまり、昔、神楽をやっていた人たちだ。だから、この方々の技術と精神をしっかり吸収するように」部員たち、一縷の望みの拍手。「あとは、主役のスサノウとクシナダヒメか。これが問題だ」。

 スサノウ役は三年生の男子で、新学期に受験のために引退し、クシナダヒメ役は櫛田姫香が演じていたのだが、一カ月前から学校を休んでいた。噂ではいじめを受け、不登校になったとのこと。自殺未遂をしたという噂も流れていた。雪乃は姫香の家に行ってみることにした。チャイムを押してもやっぱり出てこない。諦めて玄関を後にしようとした時、二階の窓が開き、姫香が顔を出した。手招きをしている。「良かった」と思い、雪乃は家に入っていった。「ありがとう」と、姫香は迎え入れてくれた。やっぱりいじめだった。姫香の話によると、学年、悪のヒエラルキーの頂点に君臨する、八人。男女四名ずつ。通称、スネークエイト。姫香が美人だし、上から目線的なふるまいが気に食わなく、目をつけられたらしい。放課後、体育館の裏に呼びだされ……。

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