小説

『スサノウの夏』添谷泰一(『古事記の八俣の大蛇』(島根県))

 姫香、スネークエイトに囲まれている。言葉の暴力、肉体への暴力。姫香、手で顔を覆い泣いている。実は、それを偶然通りかかりちらっと見ていた、能人。無視して、行こうとする。するとスネークエイトの一人が能人に声をかけた。「能人、お前、俺たちの仲間に入らねーか?」。能人、無視していこうとする。「シカトかよ」「待てよ」と手を取られる。「中学のダチだったじゃねーかよ。一緒にやべーこともやったよな」。「仲間に入れよ」。能人、「関係ねーぇ」と一言残し行ってしまう。

 夏休みに入り姫香が復帰してくれて、何とか形が出来つつあった。しかし、スサノウ役が見つからないまま七月が過ぎた。雪乃と能人の家は隣り合っていて、親同士が仲良しだったので、互いに行き来していた。能人は夏休み中、大抵、縁側で寝ていた。雪乃は一大決心をし、能人が寝ている縁側に行った。「おい、能人」。能人が起きる。「え? 昼飯?」。「じゃねーよ」。「なんだ、雪乃か」。「なんだは、ないでしょ」。雪乃、縁側に座る。「何んだよ? いい夢みてたのに」「いい夢の続き見させてあげようと思って」「何か悪い企みを感じる」「おっぱい触りたい?」「お前のなら遠慮しとく」「こう見えても、脱いだら凄いんだから」「で、その見返りにって、落とし穴が待ってるんだろ」「ねえ、神楽やらない?」「やっぱそうきたか」「ね、やろうよ神楽」「やらねーよ。そんなカビの生えたようなもの」「失礼ね。今、結構、エンタメ、スペクタクル、ファンタジーの要素も取り入れて、凄く面白くなっているんだから」「それに、暑くて、そんなもんやったら死んじゃうよ」「いい若いもんが、青春を謳歌しなけりゃならない時期に昼寝かよ?」「だから、俺にとって青春の謳歌が昼寝だから」「来なきゃよかった」と、雪乃。帰ろうとする。「ちょっと待てよ」。「やる気になった?」「いや、あの櫛田姫香って、学校休んでいたけど、部活はやってんの?」「最近、何とか部活には来ている。ああ、そういうことか。姫香、可愛いもんね」。「いや、そうじゃねーよ」「じゃあ、何でそんなこと聞くの?」「いや、俺が関わったことで、人が不幸になるのは、絶対嫌だから」「何それ?」「自殺未遂したって?」「それは知らない。噂なんじゃない? え? いじめに関わったの?」「関わっては無いけど、その……」「何よ?」「いや……」

 大型ショッピングセンターの駐輪場。スネークエイトが気弱そうな男子高校生を捕まえて、カツアゲをしている。そこへ、能人。見なかったことしにて行こうとする。足が止まる。意思に反して体が反応したのだ。Uターンして、「てめえら、弱いものいじめはやめろ!」。多勢に無勢、一瞬にぼこぼこにされる、能人。

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