「何考えてんの!すぐにやめて!」
二人は困った顔をしている。
「いや、だって心配じゃん。」
今まで事あるごとに聞いてきたセリフを兄は口にする。父は同調するように激しく首を縦に振る。
「言っとくけど、何をしたって私の気持ちは変わらないからね。それに今度変な事したらこの家出てくからね!分かった!」
こちらの勢いに押されたのか、二人はうんうんと頷くだけだった。
たぶん父と兄は当分の間何もしてはこない、はずだ。
となると、やることは一つだ。
充分に覚悟を決めた後、白戸くんを体育館裏に呼び出した。
いや、覚悟は決めたけれど、それよりも早くしないとやばい事になりかねないと感じたのが本音かもしれない。
「どうしたの?」
白戸君が目の前にいる。
「あ、うん・・・。」
呼吸が上手く出来ない。
「あの・・・。」
白戸君は何も言わずにじっと待ってくれている。
断られるかもしれない、OKかもしれない、何度も何度も繰り返してきた疑問が、ここに来てまた頭に浮かぶ。胸が締め付けられる。心臓が誰かに捕まれたような気分だ。
「あのね・・・。」
意を決してこの後を続けた。