小説

『時には、必要、かもしれない』真銅ひろし(『鉢かづき姫(寝屋川市)』)

 
 白戸裕二。真紀の言ったとおり学年で常にトップ10に入る頭の良い男子生徒だ。けれど私が好きになったのはそこじゃない。
 別に特別な事はされていない。ただ、男子たちが私を敬遠する中で、白戸君は全くそんなことなく普通に接してくれるからだ。
「でも気持ちは伝えた方がいいと思うよ。人気あるからね白戸君。今はフリーっぽいけど、誰かに取られちゃうよ。」
「・・・。」
 まぁ、それはそうだ。
 しかしだ。
 伝えた所で、である。
「とりあえず言ってみないと分かんないじゃん。OKされるかも分かんないし、超過保護な家族もちゃんと話せば分かるかもよ。」
「そうかなぁ。」
「うちらもう高校生だよ。恋愛の一つもさせてくれない家族なんて家族じゃない。」
「変わんないような気がするなぁ。」
「とりあえず言ってみようよ。邪魔しないでって。分かってくれるかもしれないじゃん。」
「・・・。」

 分かってくれなかった。
「誰だ、そいつは?!」
 兄も父も鬼のような形相をしてこちらを見てくる。
「・・・。」
 やはり言うべきじゃなかった。
「聞いてないぞ!」
 と、父。
「だって言ってないもん。」
「お前に釣り合うわけないだろ!」
 と、兄。

1 2 3 4 5 6 7