小説

『時には、必要、かもしれない』真銅ひろし(『鉢かづき姫(寝屋川市)』)

 
「そうか。今日のご飯は何がいい?夢華の好きなすき焼きか?何でも作るぞ!」
「なんでもいい。」
 早々に会話を切り上げて自分の部屋に行く。
「・・・。」
 ベットにダイブする。
 うちは父子家庭だ。父と兄の三人暮らし。母は私が小さい頃に病気で亡くなってしまった。
 父は小説家で兄は動画配信で生活している。
 その仕事が時間の都合がつきやすいのかは知らないが、何かと私に時間を合わせてくる。
 それに母が生前に私の事を宜しく頼むと二人に言ったらしい。
 そういった事もあって過保護すぎる超過保護に育てられた。
 父と兄が連携をとって私を保護してくる。おはようからお休みまで常に監視されている感じだ。
 だからそのせいもあって私は恋愛を一度も楽しめた事がない。
 中学生の頃、一度だけ告白してきてくれた男の子と付き合った事があるが、数日後にその男の子の方から急に別れを告げてきた。私はすぐにピンときた。
 絶対父と兄が何かした・・・。
 今思うとゾッとするが、その時は怒りが先行して二人を責めた。
 始め二人ははぐらかそうとしたが厳しく問い詰めると「心配でさ」と兄が白状した。
「君に妹を幸せにする自信はあるか?って言っただけだよ。」
 と、たかだか中学生の恋愛に脅しをかけて来たのが分かった。しかも驚くべきはその時の父だ。
「お父さんは何も言ってないぞ。ただお兄ちゃんの後ろでジッと見てただけ。」
 それが一番怖い。これではせっかくの恋人も逃げ出してしまうのは当たり前だ。
 それ以来怖くて告白されたとしても交際するのをためらってしまい断った。

 しかし、高校生になり、そんな私でも密かに恋をしている。
「え!?マジで!」
「声が大きいって。」
 友達の真紀は思わず声を上げる。
「始めて聞いた。誰?」
「・・・隣のクラスの白戸君。」
「おお、あの秀才。いつから?」
「高1の始めの方から。同じクラスだったし。」
「おお、じゃあ一年も片思いしてんだ。で、告白は?」
「出来るわけないじゃん。」
「まぁ、そうだね。あの二人がいたんじゃねぇ。」
「・・・。」

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