カネを払えと言うのだろう。それくらい、当然だ。こんなにも美味いモノ、カネを出さねえ方が失礼だ。
「出たくなるまで食ってけよ、兄ちゃん。ただ、出るなら、置いてけよ?」
わかっている。そんなことはわかっている。
だから今は、この飯を食うのに集中させてくれ。いくらでも払うから。借金してでも払うから。
だから──!
「置いてけよ、置いていけよ。誰か一人は、置いていけ」
──その後。
俺がその居酒屋を訪れる事は無かった。
だってまだ、俺は、ここにいる。
ここでずっと焼き鳥を食べている。
ずっとずっと、今まで連れてきた後輩や部下たちと共に、あまりにも美味い焼き鳥を、ずぅっとずぅっと食べている。
「置いていかれちまったなぁ、アンタ」
置いていくものが、もう何も残っていないから、だ。