木枯らしが吹き、雪が降り、積もり、氷が張り、それらの雪と氷は融けません。
十年、二十年、三十年、五十年、百年。
一人ぼっちの巨人の髪は、今では雪のように真っ白。
百年を一人ぼっちで生きて、巨人はすっかり白髪の老人になってしまったのです。
百年の間、巨人の庭は花の咲かない冬の庭でした。
百年目のある日の朝。
髪に花飾りをつけた小さな女の子とその女の子と手を繋いだ白いドレスの女性が、巨人の庭にやってきました。
庭の隅に置かれた籐椅子に、白髪の巨人は静かに座っていました。
巨人はもう動きません。
巨人は、百年の冬を生き終えたのです。
そんな巨人の冷たい頬にそっと手で触れ、撫でながら、白いドレスの女性は囁くように言いました。
「愛するあなた。とうとう百年が過ぎてしまいました。散ってしまった花のことなど忘れ、あなたは新しい花を咲かせてもよかったのに。私はそうなることを願っていたのに。あなたに孤独で不幸な人になってほしくなかったのに。幸せになってほしかったのに」
白いドレスの女性は、瞳を涙で潤ませながら微笑んでいました。
「あなたは、我儘な愛を百年、貫いてしまった。本当に、融通が利かない不器用な人。でも、それももう終わり。百年、愛し抜いて、百年、寂しい我儘な愛を貫いて、あなたも気が済んだでしょう。今度はあなたが愛される番ですよ」
「お父さん、お父さん。アンジュが、お母さんと一緒に、お父さんを迎えに来たよ!」
生きていた頃と同じように、花飾りの少女は巨人の膝に抱きつきました。
凍りついていた巨人の魂が、ゆっくりと解け始めたようです。
「この人の悲しみを深くしないために、この人の心を守るために、花を咲かせずにいたみんな、どうもありがとう。この人は、私たちの天の庭に連れて行きます。そこで、この人は、幸せな巨人に戻るでしょう。だから、あなたたちは、あなたたちの花を咲かせていいのよ。芽吹いていい、実っていいの」
女性がそう言うと、庭は切ない溜め息を洩らしました。
庭はじっと耐えていたのです。
花を咲かせたかったけれど、緑の葉を茂らせたかったけれど、甘い実を実らせたかったけれど、大地を緑色の絨毯で覆いたかったけれど、そうせずにじっと耐えていた。
花も木も草も――巨人の庭の花々や木々は、我儘で悲しい巨人が大好きだったから。幸せな巨人の庭の花や木や草でいることが誇りで喜びだったから。
巨人が百年の冬を生き終えて妻と子の許に行くと、巨人のために砕石屑の下で耐えて眠っていた草花や木々は、思い出の中の巨人を懐かしんで、温かい色の花を咲かせ、若々しい緑の葉や草を茂らせ、甘い果実を実らせ始めました。
誰もいなくなった巨人の庭は、今、花の盛りです。
庭は、大好きだった巨人一家の幸せな思い出を語りたくて、誰かが巨人の庭に来てくれるのを待っています。
春を愛する人がやって来るのを待っています。