小説

『灯』森な子(『高浮彫桜二群鳩大花瓶』)

 灯くんは、今日見たあの壺と同じなのだ。鳥や木や花に守られた壺。中に何が入っているか、はたまた空洞なのかは誰にもわからない。灯くんにしかわからない。けれどそんなの彼に限らず、全ての人が同じなはずだ。そういうことを忘れてはいけない。
「あ……海、見て、大きな鳥が飛んでいる」
「え? ああ、あれは夜間飛行だよ」
「夜間飛行……そっか、飛行機かあ」
 灯くんはきらきらした目で空を見た。壺の中にひょいと煌めきが放り込まれたのを、私は見た。

 煌めきでぎゅうぎゅうになればいい。

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