「ジャクジャク氏は二人しか認めなかった。お前さんらは知らないかもしれんが、少なくもジャックスオアベターだ。ジャックが二人いれば大丈夫だろう。それにオレにはこの国の裏世界の方が性に合ってるしな。王国まで送り届けたら、そこでおサラバさ」
ダニエル氏はニイとほくそ笑むと、ウィスキーを飲み干した。
*
ボブノヴィ王国宇宙開発局局長のジャクジャク氏は、アルフレッド国王も参席する王国議会にて、宇宙船の発射計画の説明をしていた。
「王国軍のおよそ4割の兵を含めた先遣隊をJJ001号に乗せ、一番に出発させます。私も局長として、この始発号に乗船します。そして国王陛下におかれましては、陛下のご希望も汲み、JJ003号にご乗船いただきます」
「それでは陛下が危険ではないか!」
「もっとあとの号に乗船させるべきだ!」
などとガヤが飛び交ったが、アルフレッド国王が口を開いたことで、議会は静まり返った。
「かまわん。私は老い先短い身、せめてジーン・ジャックの姿だけでも機窓から眺められればよし」そう言った国王は咳き込んだ。
その様子を見ていた下っ端議員たちが囁き合った。
「やはり陛下がご病気というのは本当らしいな」
「ああ。王国の技術をもってしても乗船期間はおよそ2年と言われている。果たして向こうに着くまでご無事でいられるかどうか……」
「王妃も亡くなり世継ぎもいないというのに……」
議会の不安げな気配を一蹴するように、ジャクジャク氏の野太い声が響いた。
「とにかく、国外に情報が漏れ始めている以上、一刻の猶予もありません。始発号は一週間後には地球を出立します。各位におかれましても、割り当てられた乗船の準備をなさるように! 以上!」
*
ほどなくして、ボブノヴィ王国の宇宙船が発射されたというニュースは瞬く間に世界を駆け巡った。そしてその翌朝には、計画通りジャックら三人はその日に生えたばかりの豆の木を登り始め、昼前には三人は無事王国に登り着いた。
王国のそこら中が金銀にまみれていたが、それらをじっくり観光する暇もなかった。ダニエル氏の仲介でジャックとスプラットは宇宙開発局監理部部長でJJ003号艦長のジャク・ランタンに預けられた。別れ際になって、二人はそれぞれダニエル氏と抱擁を交わした。ダニエル氏は去り際に言った。
「手紙が届く当てもないからな。時たま二人を思って星を眺めることにするさ」