小説

『さくら』森な子(『さくら、さくら』)

「こんな子がお隣さんなら安心ね!うちの子をどうぞよろしくね」
 私は驚いて、それからなんだか可笑しくなってけらけらと笑った。
「私、牧瀬桜です。そして、こっちにいるのが父です」
「こんにちは。牧瀬です。娘をどうぞよろしくお願いします」
 私は父のことを父親だと紹介するのにものすごくドキドキしていた。そんなこと夢にも思っていないだろう相手のご家族はにこにこ笑って自己紹介をしてくれた。
 ひら、と目の前を美しい白い花びらが舞う。
 花盛りだな、と眩しそうに呟く父の横顔を見ながら私は、そうね、と父の真似をするように短く答えた。

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