「アケミ」
名を呼ぶと振り返った彼女は、蘇った最後の記憶よりも少しやつれていて、年数の経過を感じさせた。
「どうして……」
それでも愛しい妻のままだ。
「ごめんな、本当に。こんな夫で」
「いい、いいから……」
私は首を振り続けるアケミを精一杯抱きしめた。
目が覚めた時、僕は1人だった。もうあの3人とは会えないかもしれないとなんとなく察した。手には3本の鉢巻が握り締められていて、それぞれに何か書いてある。
「オニ、退治、成功」
きっと3人は未練を果たせたのだろう。それは自分のことのように嬉しいことだった。
しばらくすると保健室の先生が様子を見に来た。
「あら、それなぁに?」
「え?」
「頭に巻いてるの」
僕は指摘されたそれを頭から取る。それは僕の鉢巻で、そこには「生きろ、少年」とだけ書かれていた。
「生きなきゃですね」
この腰につけた寿命はあと何年あるか分からない。けれど僕は、自然と死が迎えにくるまで、この寿命を手放さないことを強く心に誓った。