小説

『死亡フラグ狂騒曲』宍井千穂(『桃太郎』ほか)

 一寸法師が駆け寄ってくるが、ダメージが大きすぎて体が動かせない。その間にも、口はフラグを立て続ける。
「情けないが、オレはここまでのようだ……。あとは頼んだぞ、一寸法師」
「い、いやだ桃太郎さん!僕をひとりにしないでよ!」
 一寸法師との感動的なやり取りの中で、桃太郎は必死に考え続けた。なぜオレにフラグが立ってしまったのか。途中まで一寸法師が特攻しそうな雰囲気だったろ……。
だんだんと意識が薄れていく中で、桃太郎の耳に感動的なメロディーが聞こえてきた。おまけにナレーションまで入ってくる。
『ありがとう桃太郎……君の勇姿は永遠に語り継がれることだろう……。『おとぎ話スターズ〜さらば桃太郎編〜』完!次回、『一寸法師、桃太郎の遺志を引き継ぐ』。乞うご期待!』
 荘厳な音楽とともに辺りが暗くなってくる。

「タイトル系フラグは……反則だろ……」
 桃太郎の呟きは、暗闇に吸い込まれていった。

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