小説

『リーリエとジーリョ』イワタツヨシ(『ジキルとハイド』)

3
 それから二年後の未来、西暦2042年で、
 リュークとリュカは、星座を眺めていた夜空に奇妙な光を目にした。
 まるで、隕石が大気との衝突によって多数の破片になり、燃えて落ちているような、五つの光。それぞれが、赤、橙、黄、緑、青の色を持つ。その五つの光は突然、同時に現れて、閃光を放ち、すぐに彼方へ消えていった。
「さっきの光は何かな?」と、まだ夜空を眺めて興奮さめやらないリュカを尻目にリュークは夕食の準備を進めている。しかしリュークは、途中で堪えきれずにくっくっと笑いだした。
「さっきの光は、俺がつくったランディングライトの光だな」と、リュークは言った。

 生前、博士のカーボネルは七機の飛行船を所有していた。それは彼の研究所の格納庫にあり、カーボネルのみが使用でき、格納庫には常に厳重なセキュリティーがかけられていた。
 遡ること三年前、リュークは、「飛行船のランディングライトを新しくしたい」というカーボネルからの特注の依頼を受けて、「太陽の代わりをつくる仕事」の傍ら、ライトをつくって研究所に届けた。それは太陽をつくることに比べればどうということのない仕事だった。
 その頃、リュークは研究所の職員からこういう噂を耳に入れていた。「その飛行船はカーボネルのみが使用でき、時空を超えて飛ぶことができる」
 リュークは面白半分で、ライトの表面に特殊なフィルムを貼った。赤に橙、黄、緑、青、それから藍、紫。ライトを通してその色に光る。人間の視覚では見えない。ただ彼は、いつかその飛行船を見つけたときに、自分がカーボネルから直々に特注の仕事を受けたことを、リュカに誇らしげに話したくて。

「あの五機は編隊を組んで飛んでいたな。だから乗っていたのはきっと、カーラとナオミ、ダイラ、ディアラ、ユッシだな」と、リュークは推測した。

 時空を超えて飛ぶ飛行船。もしそれが事実なら……彼らは時間を短い間隔で飛び越えているようだった。
 リュークとリュカの二人は、それから三年の間に、夜空に同じような光を複数回、目撃していた。

「いつか十二の星座に行ってみたいな」ある日、リュカが星空を眺めながら口にした。「次にあの飛行船を見つけたら、追いかけて乗せてもらおうよ」
「どうして?」
「だって、時空を超えて飛ぶくらいだから遠くの惑星へ行くことなんてわけないだろう」
「まあ、面白そうだな」

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