小説

『リーリエとジーリョ』イワタツヨシ(『ジキルとハイド』)

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 またある日の丘で、
「ねえ、今日は面白い話があるよ」と、リュカがリュークに言う。「ジーリョがカーボネル博士を殺したって」
「ジーリョは裏切り者だったな」
「うん、ジーリョは裏切り者だったよ。それでさ」とリュカは話を続ける。「ジーリョはカーボネルを殺した後にあの研究所から何かを盗んで飛行船で逃げたらしいよ」
「何を盗んだのかな? いいよ。知っているなら勿体ぶらずに話しても」
「パールって呼ばれる真珠みたいな球体らしいよ。でもそれが何かは分からない。ところでさ」と、リュカは話を切り替える。「僕たちはジーリョとリーリエのどっちにつくられたのかな?」
「さあな、リーリエかな。分からないな」とリュークは言う。「でもサリーなら知っているかもしれないな」
「そうか、サリーなら知っているかもしれないね。次に研究所に行ったら彼女に聞いてみるよ」

「それでサリーは何だって?」
「何が?」
「俺たちをつくったのはジーリョかリーリエかって話だよ」とリュークはリュカに言う。
「ああ、サリーも知らないらしいよ。ところでさ」とリュカは話を切り替える。「ジーリョが逃げてからさ、その後を追った人たちがいるらしいよ。すぐにリーリエが追いかけて、その後にカーラ、ナオミ、ダイラ、ディアラ、ユッシ。ナオミとダイラは研究所でエンジニアをしていたから知っているだろう?」
「知っているよ」リュークは言う。「でも何で追いかけたのかな?」
「それはジーリョが研究所から盗んだパールを取りかえすためだよ」リュカは言う。「それでさ、ジーリョは飛行船でどこへ逃げたと思う?」
「さあな」リュークは言う。「いいよ。知っているなら勿体ぶらずに話しても」
「未来だって」
「ずいぶん詳しいな」
「全部、サリーから聞いた話だよ」
「そうだろうな」
「あの飛行船は時空を超えて飛ぶことができる。何十年、何千年という間隔でも。但し、行き先は未来のみ」
「そうか」と、リュークはその話に驚きもせずに言う。「そんなものをつくれるのはカーボネルくらいだな」
「そうだね」
「でも、ジーリョが研究所から盗んだパールって何だろうな?」
「うん、それは知らないらしいよ。残った研究所の人たちも、誰も」

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