小説

『くじの糸』青木敦宏(『蜘蛛の糸』)

「こら、奸田くん、先に家賃を払いなさい!」
「太一、貢子に金返せー!」
「あ・・・・」

 福之平は天上界へ戻る途中、奸田太一の部屋から届く阿鼻叫喚の声が、小さくなっていくのを背中で聞いていた。
「お届けした福のアフターサービスは当日限り、というのが当事業部の規則でございます」
 すでに福之平の頭の中は、さとみちゃんと行く竜宮城のことでいっぱいだった。

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