「ホント、雪さんの手は触ると、こっちが凍っちゃうほどに冷たいもんね~。氷だね、もう殆ど」とぶんぶくが笑いながら言いました。
それ只の冷え症の女じゃないの? 忠左衛門は思いました。
「あ、でもね、雪さんは力はモノホンにあるから、相手を凍らせるなんて事は造作もなく……」と言いながら、ぶんぶくが雪女の背中を叩きます。
すると――ボタボタ~と雪女の服下から大量の何かが落ちてきました。
見れば白くて四角い物が一杯。
「あ~ぶんぶくさん、私の体を叩かないで下さいよ~。カイロが全部落ちちゃったじゃないですか~」
妖美、美麗なイメージを悉く壊す雪女だと忠左衛門は思いました。
そして雪女の隣。
赤く大きな身体。頭の上には二本の角。立派な虎皮で出来た縞々のパンツを履いている赤鬼が立っています。
「あ、こちらは赤鬼さんね」とぶんぶくが紹介します。
「み、見れば分かります」
「こう見えても赤鬼さんね、恥ずかしがり屋って言うか。まあ、結構な温厚な方なのよ」
「でも……寒くないんですか? こんな雪中パンツ一枚で……」
「……ボソボソ……」と赤鬼が何か呟きました。
「えっ? な、何か言いましたか?」
余りに小さな声で忠左衛門は聞きとれません。
するとぶんぶく、間に入って赤鬼の言いたい事を耳打ちで聞きとります。
「……えっと、赤鬼さんは”二枚履いてるから大丈夫”だそうです」
「いや……二枚だから大丈夫ではなくて、こんな寒中でパンツだけでは……」
「……ボソボソ」
また赤鬼が言いました。またぶんぶくが聞き取ります。
「”いいパンツ”だそうです」
そりゃあ唄になってる位だから凄いパンツなんでしょうが。
忠左衛門はそれ以上は聞くまいと思いました。
「あれ? ぶんぶくさん。お仲間ってご自身も含めて五人だけですか? 後の十五人は……」
「ん? あ~今きたよ、来てくれました」
遠目からも聞こえるざっくざっくと雪踏みしめる音。それも大人数です。
傍と見ればこちらに向かってきます集団。それは地蔵様一行の行列です。
「ま、まさか仲間って……」
「そうです。このお地蔵さん達です」