小説

『赤穂浪士にお邪魔 二十人の愉快な仲間達』洗い熊Q【「20」にまつわる物語】(『赤穂浪士』『ぶんぶく茶釜』『笠地蔵』)

 忠左衛門達の前にずらずらっと横一列に並んでくれます。そしてぶんぶくの紹介が始まりました。
「えっと、ざっとご紹介をば。こちらの蓑を被っている六体の地蔵が笠地蔵さん達で~。こちらはとげぬき地蔵さん。そして縛られてないけど縛られ地蔵さん。おとめ地蔵さんにしのぶ地蔵さんでしょ~、言うな地蔵に田植え地蔵。確かこの笠を被ってる二体は、また別地方の笠地蔵さんなのよね~。そして最後に……えっと……ねぇ!? 最後誰だっけ?」
「……俺に聞くなよ、俺に!」と耳打ちされたゴン狐は言い返します。
 思い出せずに困り果てる二匹。
 それを見かねてか、最後の地蔵様は一生懸命に身振り手振りで何かを伝えようとします。地蔵様は言葉が出せません。
「え? なに? 三点倒立したい?」
 そのぶんぶくの返しにお地蔵様はむっきーと怒った様子。
 最後の手段とばかりに筆と墨汁と持ち出すと、何処から取り出したかの和紙に達筆な字で書き上げます。
 その和紙には自身の名”地蔵菩薩立像”と掲げられます。
「あー”じぞうぼさつりつぞう”さんでしたね。そうでした、そうでした」
 その名を聞いて忠左衛門は青ざめます。
 地蔵菩薩立像!? それ国宝じゃん!? 地蔵界のレジェンドじゃん!?
 何故にこの狸と国の宝の地蔵とが仲が良いのか。納得しがたい忠左衛門でしたが、こうして二十人の愉快な同士が集結したのであります。

 

「えっと……では参ります」
「はいっ、えいえいお~と!」
 ぶんぶくと愉快な仲間達は火消装束に着替えまして、いよいよ討ち入りと参ります。
 ただ忠左衛門。内蔵助の代わりを何故かぶんぶくが行う事に、不快さと疑問を拭えません。
「……じゃあ、ぶんぶくさん。時を告げて下さい」
「ん? はいはい。今は午前様前の十一時……」
「そうでなくて! 合図の太鼓を叩くんですよ!」
「あ、そういう事ね。では赤鬼さん、よろしく」
 は? と疑問に感じて振り返ります忠左衛門。
 そこには直径四メートルの日本一の大太鼓。それを目の前に赤鬼さん、襷掛けして構えています。

 はい、よおぉぉ……

「わー! わー赤鬼さん! 待った、待った!!」

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