—ふたりの妖精の命を引き換えにして、描かれた絵図を無造作に踏みつける男が一人/彼の正体は女児を処理した、あのシェリフ本人だった。
「個性と個人的な感情は、勤め仕事には最も邪魔なもんだよ。
………わかったか化け物?お若い機械の恋人さんたちよ」
男/彼/一人のシェリフは時代がかった紙タバコを加え/火をつけ/そして吐き出す—自身の踏みつける景色、水晶絵図の美しさに感嘆の念を抱きながら、シェリフはそれを腹の中に静かに仕舞い込む。
簡易テレポーテーションによる、雑な転送/耳鳴りと眩暈の中、彼は仕事を果たした/識別符号ピート、翠玉髄の戦闘妖精の始末=完全廃棄を。
シェリフは拳銃に安全装置をかけてから、片手で器用にホルスターにしまった。
すると、支給品の携帯端末から着信を知らせるメッセージが流れる。
シェリフは短く舌打ちを漏らすと、携帯端末を頬へと押し当てる。
「もしもし、ジェームズだ。
こっちは終わったよ。
また、新しいタイプを作るんだってな?
………もう、いい加減やめにしたらどうだ?
作り手の当の人間様が、完全だったことなんかあるのかよ?」
シェリフの電話相手は、一体誰なのだろう?その答えはわからない。
物語の住人でもない我々に、一体何の真相がわかるのだろうか?
いや、きっとそれは沈黙の硝子箱の中、永遠にわかりはしない。
観客に許されるのはそう、拍手喝采。どんなに硬質な水晶すらも砕かんばかりの拍手喝采だけ、なのだ—-。