かつて、青を抱く星で幾度も大きな戦争があった。
十二度までは耐えたが、十三度目を迎えた時、ついに星は死に絶えようとしていた。
そんなある時、深い深い地底より菫水晶の妖精が現れた。
妖精は地球を救い、ほんとうの楽園へと旅立った。
—-地球に伝わる古い神話の一つだ。
世界は再び、文明のカンブリア紀を迎えていた。
科学技術、その進歩の、発展の奔流。そして萌芽。
どこの国もたちまち機械化され、ありとあらゆるモノが最短効率化され、簡易テレポーテーションの技術まで導入され始めた。
技術に乗り遅れた人間が静かに淘汰されゆく時代だった。
それは、今回の物語の舞台でもある、北西部連合国ロロットも例外ではなかった……。
戦闘狂の少女が夜を駆け抜ける。
十二センチの尖晶石“スピネル”・ヒール。
狂妖精”フリークリスタ”。
コルセット、ヘソ出しミニスカドレス。強調される未成熟な胸。
真っ赤なベリーショート、両耳を彩る無数のピアス。ギラつく目/連想イメージは赤い女豹。
新世紀のパンキッシュ・ガールは、月光を背に六枚の翅で闇を裂いた。
彼女の任務/旧式”水晶人形”のコアの回収。つまるところ要らなくなった旧式の廃棄/彼女の仕事は、要らなくなったいのちを刈り取る死神。
ティンク。それがスピネル・ヒールの少女の識別符号、人間でいうところの名前。彼女もまた、人間の手によって作られた機械仕掛けの水晶人形だった/彼女=新式/狂妖精“フリークリスタ”の中でも、飛び切りのワイルドカード(セーフティが格段に緩い)
ティンクは獰猛な笑顔を浮かべた。
ネオン瞬く、ニセモノの宝石箱のような街の中を、ホンモノのアタシが飛んでいる。選民思想。同時に沸き起こる破壊衝動。自然と笑みがギラつく。ピアスがチャリチャリと耳元で音を立てる。獲物はすぐそこ。