「大鬼さん……」
「みんな、ありがとうだ。みんな、すまないべ」
「いいっぺいいっぺ、気にすることねえべ。あたしらみんな、桃太郎が大好きだべ」
「それはよかったべ……」
「それより大鬼さん……ほんとによかったんだべ?」
「なにがだべ」
「……桃太郎のことだべ」
「……いいんだべ」
大鬼は、桃太郎が帰った方をいつまでも見つめていました。
「あんな立派に大きくなったんだべ、いいことだべよ……」
大鬼の顔は少しだけ、嬉しそうなのでした。
むかしむかし、あるところに、鬼が島という島に、誰よりも心優しい大鬼がおりました。
そんな大鬼は少しの間だけ、桃太郎という人間のあかんぼうと一暮らすことになったのです。
桃太郎と過ごした時はとても幸せで、大鬼の長い長い一生の内、ただ一つ忘れられない思い出になったのでした。