テーブルの上には、有名店監修のおつまみの缶詰や、総菜、スナック菓子、酢の物、高そうな海外のワインが並べられた。
「私にこんなものばっかり食べさせようってわけ? これでご機嫌になると思ったんだねぇ」
なんだか意地悪なことを言ってみたくて啓介に言うと、これは絶対おいしいからと言いながら、高そうなワインをすぐに開けてくれた。
ワイングラスに注がれたワインは、花束の中に飛び込んだみたいに華やかな香りがして、口に含んだだけで、苦みも甘みと酸味も全て味わうことができた。おいしい、と小声で言うと、啓介は、キッチンから缶詰をアレンジした一品を持って来て、心から嬉しそうな顔をして向かいに座った。
「なんかおもしろいものないの?」
私が言うと、啓介は、あるある! と意気込んで、スマホの画面を見せた。
「なにこれ」
「戦国武将になりきって教科書で見たような合戦ができるやつ。敵の首将の首を討ち取って並べられるんだよ」
趣味悪、と思いながらスマホを借りてプレイをすると、時間を忘れそうなくらい面白かった。剣や銃で画面の中を走り回りながら、たまに間違えて、鳥や馬の首をはねてしまったりする。
両手がふさがる、と言うと、啓介が絶妙のタイミングでワインとおつまみを私の口にそっと運んでくれた。
ちらりと前を見ると、また嬉しそうな表情を浮かべて啓介が私を見ていた。私は首遊びに夢中になって、気づいたら夕方も過ぎているようで、見慣れない部屋のカーテンの隙き間から月明かりが漏れていた。
私は、ひさしぶりに飲んだからか、ゲームなのか就活や将来への不安なのか、毎日への不満なのか、なんだかわからないものに包まれて、泥のようにソファになだれこんで横になった。
啓介は私を追うように覆いかぶさってくると、そのままキスをして首もとに手を入れてきた。私はもうなんだか抗う気持ちも起きなくて、啓介にされるがままに愛撫されつづけた。
そのままベッドルームに抱きかかえられながら運ばれ、啓介の舌が体中を這うのを感じた。そういえばあの女はどうしただろう、と頭をよぎったがどうでもよくなった。枕から洗ったばかりの洗剤の匂いがして、シーツの波にのまれていくのが分かった。
最初に啓介が果てたあとも、互いの熱い息が顔にまとわりついて、それから何度も交わって、交わっても交わっても、まだ足りない気がして、気が遠くなりそうだった。
「ねぇ、キリがないから、どうにかしたい」
どのくらいの時間を費やしたか分からないまま啓介に言うと、その息がまた熱いのが自分でも分かって、喉も唇も渇いていた。