オートロックを開け、エレベータに乗り、3階で降り、303のドアに鍵を差し込んだ。あれ、なんか人の気配が、と思ったときには背中で玄関が閉まって、目の先のリビングには女の人がいた。
「あれ?」
思わず口に出すと、啓介が、思い出したように、あ、と言った。
私をお持ち帰りしたら彼女が家に来ちゃってた修羅場パターンかな、と息を飲んでだまって突っ立っていると、入りなよ、と啓介が促す。あれ? とまた思う。
「あぁ、昔の彼女なんだ」
は? と言った時には目の前に女がぞろぞろ出て来た。2LDKくらいの立派なマンションではあるけれど、どこにこんな女たちが、しかもこんな近距離で何を集まっているのか、もしかして、啓介があまりにもヒドいから元カノ集合会議なのか、と混乱していると、啓介が、まぁ座って、と言った。
いち、に、さん、と女の数を数えると、7人いた。
女たちは、かわいらしい子ですね、と言って私を見た。特別かわいいわけではないけれど、私はこの女たちの幸の薄さに驚いた。顔は普通なのに、取り巻いている空気が全員淀んでいる。
「女中とかお手伝いさんと思ってればいいから」
啓介は冷蔵庫を開け、缶ビールを開けて一口飲み、私には缶のカクテルをテーブルに置いた。
「ちょっと待って、さすがにこの環境は無理だわ、わけわかんない、帰る」
席を立とうとした私に、啓介は缶のカクテルを開けて渡した。
「とりあえず飲んでよ。気に入らないならみんな追い出すから」
は? と思いながら、とりあえず落ち着こうと、カクテルを飲んだ。
「えっと」
「いままで俺はひかるちゃんのようなカワイイ女の子がいようとは知らなかったからさ。ほんとに、なんでも望む様にするから」
怪訝な顔をしているのを自分でも感じながら、とりあえずここまで来たらわがまま放題してみようという気になった。酔っているんだろうか、と思いつつ、楽しいことなんて最近なかったしたまにはこういうのもいいか、と頭の中をいろんな考えが巡った。
「じゃあ、申し訳ないけど、この女とこの女と、この女もこの女も、やっぱりこの女とこの女も、出ていかせて」
私が言ってみると、啓介はあっさり、いいよ、と女達を追い出そうとした。