小説

『最後の料理』NOBUOTTO(『銀河鉄道の夜、注文の多い料理店』)

「ぼ、僕はどうなるのですか。食べられてしまうのですか」
 一瞬キョトンとしてそれから大声でラポは笑った。横にいたジェシーも透き通るような声で笑った。
「さて、ジョバンニ君もお腹が一杯になったろう。帰ろうか」
4.出発
 ジョバンニとラポはジョシーに見送られて店を出た。無事に店を出ることができてジョバンニは安心した。来た道を戻る。
「ジョバンニ君。この星をみてどうも思う」
「働き者ばかりだと思います。畑でも一緒懸命働いていました。そしてこのビルの中でも誰も休むことなく掃除をしています。とても真面目な人達の星だと思います」
「他に誰がいる」
「他に誰がって」
 そう言われてみると働いている人しかいない。こんなに沢山のビルがあるのに、道を掃除している人はいても、歩いているのはラポとジョバンニだけである。
「ラポさん、働いている人しかいません」
「そう。ほら、空を走っている車が降りてきた。見てごらん」
 運転する人はいるが乗客はいない。そしてまた空に飛んでいった。
「働いている人だけがいる町」
「そう。そして、彼らは君のような人でない。人に作られた人なんだ」
「人に作られた人って」
「まだ、ジョバンニ君には難しいかもしれない」
 ラポは振り返って山の上の塔をさした。輝きを失い朽ち果てている塔である。
「この人達は、あの塔の中で作られた。畑仕事や建設、運転、そして戦士。どの仕事でも最高の能力を持つように作られた。プロ中のプロ」
「作られたって。誰が作ったんですか」
「この星にいたほんの少しだけの人間」
「あの塔の中にいるのですか」
「いや、みんな死んでしまった。自分達の作った技術によって。まだジョバンニ君の世界にはない技術だ」
「じゃあ、リーさんもジェシーさんも。けれどジェシーさんはリーさん、自分のお父さんを殺してました。僕は見たんです。いや、壁に写っていたんです」

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