母の言う「普通」の人たちが集まる場所…。
…そして、これからも広がり続けていく…砂漠…。
私は、そんなことを考えつつ、次第しだいにまどろんでいく。
眠かった。ひどく眠かった。
正直、あの砂漠を歩いていた時から、眠たかったのだ。
だが、進まなければならないという気持ちのもとに、必死に歩いていた。
歩かねばならないと思い、歩いていたのだ。
…だが、それも、もういい。
身体が崩れてしまうのだから、しかたがない。
疲れたのだから、休めば良い。
それは、単純な答えだ。
そうして、私は砂に埋もれながらゆっくりと目をとじる。
ざらざらという音は心地よく、身体が砂と一つになっていくのがわかる。
やがて、町のほうから大きなふくろを担いだ人影がやってくるのが見えた。
私はその人物を見つめながら、静かな眠りに落ちていった…。
…昼になって帰っても、娘は姿を見せなかった。
おおかたベッドで眠っているのだろうと見切りをつけ、買ったものを片付け、二階にあがってみれば、窓がだらしなく開いて冷たい空気が室内に入り込んでいる。何をズボラなと思いつつ、ふとベッドの上を見ると、嫌なことに大量の細かな砂がシーツの上に溜まっているのが目にとまった。
…最近は、いつもこうである。誰が洗濯をすると思っているのだろうか。
そうしてため息をつきながらシーツをめくり、大きく窓を開けて中にあった砂をすべて外にぶちまける。窓の外は庭になっているし、義理の母の灌木に多少かかったとしても痴呆気味の彼女は今さら気にしないはずだ。
…それにしても娘はどこへ行ったのか。