小説

『はじめのモモ』みしまる湟耳(『桃太郎』)

これを食べて
どうかモモを 食べないでおくれ、と
あつまったキケンなものたちを帰らせた

おじいとおばあは
モモの汗からアメをつくった

淡い果実の甘さに
ほんのり塩味

甘さがよりきわだって
瞬く間に大評判

アメを欲しがるものたちも
またたくさんたくさん
あつまった
あつまった

アメを食べると
不思議が起こった

病のものはたちまち治り
寝たきりのものは起き上がる
怪我したものの血はとまり
枯れた声なら歌いだす

ふさいだ心もほろりと溶いた

おじいとおばあのところには
アメの行商人が列をつくった
にせものの飴屋まで市を立てだした

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