小説

『はじめのモモ』みしまる湟耳(『桃太郎』)

またアイタイね
またオイカケタイね

さみしいキモチを小さくしたいかのように
コオニ達のたくさんは
だんだん だんだん 
黒砂糖のように、どんどん海に溶け出してゆきました

とけた黒いコオニたちで
海はいっとき、まっ黒け

でも、くじらがひと打ち
波間をジャンプして海面を打つと

その鯨のあけた波間の穴から
海は青い色をとりもどし
もとの静かな海へとかえっていきました

モモを追っていたコオニたちも
黒いオニガシマも、もうありません

深く沈んでいったクジラの残した波も
ちゃぷりとなだらかな海に小さくとんがって
もう消えました

さわぎはもう
みんな 
なくなった
なくなった

どんぶらこ

そんなおおきくない

とんぷかこ

もっとちいさい

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