小説

『ゴク・り』冬月木古(『桃太郎』『聖書』)

 そして礼拝が終わると他のみんなは各々立ち去って行った。牧師も静かな笑みをたたえ一礼すると、ドアのところで清森夫妻のほうに目を向けたが、何かを察知したように、ドアの向こうへ消えていった。そして残った清森夫妻は、十字架に張り付けられたキリストの前に、ひざまづいた。

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 カビは繁殖する。
 喘ぎ声も出さずに。
 入り乱れた様子は、どれがオスでどれがメスか、分からない。

 ワタシは、パソコンに映し出される淫らな動画に、肌を澄ます。半分に切ったイチジクを、見つめ、下から舐め上げる。イチジクがビクンッと震えた。

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「あ、そうそう、清森さんのところ建て替えするらしいわよ」
「え?あのロイヤルハワイアン?」
「セレブは違うわねぇ」
とせれぶが言う。

 
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「はじめに、かみさまは天と地をそうぞうされた」
「ちょっとあなた、聖書を読み聞かせるの?むずかしすぎない?」遥の父と母は、今夜も幸せな時間を過ごしていた。
「でも桃太郎や浦島太郎はもう暗記するほどに読みこなせるようになったし、聖書なんか情操教育にいいかなと思ってね」
「それもそうね」

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