小説

『新生アリス計画』ちまき(『不思議の国のアリス』)

「前半はともかく、バトル路線の世界設定とアリスの魔王キャラは使えると思わない?」
「却下!」
にべもなく、女王の意見は一蹴された。
「な、なんでよー!?」
「なんでもじゃねぇよ。特にアリスのキャラがありえない」
「主人公が反感買うキャラじゃ、何もかも成り立たないよ」
「そもそも最終的には全部女王が持って行ってるじゃん!誰が主人公だよそれ!」
「バトル路線を取ったとしても、主人公はアリスさんじゃないと」
「勇者が魔王でしたとか、マジ勘弁だわ」
「古い、古いわ!主人公から変えていかないと結局原作と変わらないままじゃない!今時の子供は思った以上にシビアで、刺激を求めているのよ!彼らを満足させる為、もっと時代に合わせて変えていかなきゃ、何の為の改変計画よ!」
 非難轟々の嵐の中、一歩も引かない女王。流石と言うべきだが、しかしその言葉はどこかで聞いた事があるような…。
 そうこうしている間にも討議は続き、終わる様子は無い。

 ここは飾り毛のない白い壁紙に囲まれた広い部屋。
 そこでのこの状況はさながら、現実世界でもよく見る企画会議のよう。
 部屋を出てみれば、入口の扉には次のような張り紙が貼ってあった。
『時代に合わせたお伽噺を
 新生アリス計画
 アイディア募集中』
 新書以外にも、パブリックドメインをアレンジしたスピンオフや新釈作品が増える現代、物語の登場人物達も生き残りをかけて話し合いを行っているようだ。自分達を忘れられないように。
 アナタに何かアイディアがあったなら、是非彼らに一報を…。

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