小説

『新生アリス計画』ちまき(『不思議の国のアリス』)

「あとコレ、私のこの服どう思う?」
 次にアリスが語るのは、自身の衣装。
「どうって…。一般的アリスさんスタイルかと」
 白ウサギは見たまま答える。
 裾が広がったエプロンドレス。『不思議の国のアリス』が書かれた当時の少女の、一般的な普段着。それに頭部のリボンでも付けば、多少の差異はあっても、誰もが一度は目にした事があるアリススタイルと言えるだろう。
 だがしかし、アリスは気に入らない。
「こんな服、今時JAPANNのロリータしか着ねぇよ!!」
 叫ぶや否や、白ウサギの耳を掴んだ時と同じ形相で、アリスは自身の衣装をビリビリと引き裂いてしまった。安心してください。中に別の服、着ています。
 アリスの言葉は本当で、近代社会の現在、欧米でもエプロンドレスを着る子は珍しい。本来、本場のはずの欧米人が、日本のロリータファッションを観光で見に来る程だ。
 そんな、時代遅れと言っていい衣装を脱ぎ棄てて、トレーナーに短パン、靴は勿論インヒールスニーカーの今風女子の服を身に纏ったアリス。リボンも取っ払って、キャップを被れば、もはや誰だか分からない…。完全なキャラ崩壊だ。
「何もかも古臭いわ!今時の子供が満足する訳ないでしょ。もっと時代に合わせてあちこち変えていくべきだわ。
 まず冒頭の時点でもう無理あんでしょ。時計持って走るウサギを追いかけて?はぁ!?
 行くかっつぅの!んな得体の知れないモノ追いかけないで警察に通報するわ!」
「えぇ!!?」
 白ウサギは開いた口が塞がらなかった。それ言っちゃう?その思いしかない。
「じ、じゃ、ドコをどう変えるつもりですか!?」
「やっぱりバトル路線でしょ」
「はぃい!!?」
 サラリと、しかもこれまでで一番可愛い顔でアリスは言い放った。
「今の時代、ドラマはともかく売れてる漫画や小説って、だいたいバトル物でしょ?『不思議の国のアリス』をバトル物に路線変更した上で幅広く市場を開拓していけば、オタク文化と相まって世界のトップに躍り出る事も可能だわ!」
「野望が凄まじいですね!」
 と言うか、商魂がたくましい。

1 2 3 4 5 6 7