小説

『マッチ売りの少女とぼく』霜月りつ(『マッチ売りの少女』)

 幼稚園のカナちゃんが一番かわいくてぜったい結婚するってチカイあったけど、やめてもいいかな……。

「わたし、もういかなくっちゃ」
「少女」が言った。
「どこへいくの?」
「お話の世界よ。わたし、そこでマコトちゃんのことを思っているわ。マコトちゃんが忘れないかぎり、ずっとそこで幸せに暮らすの」
「ほんと? 幸せになるの?」
「ええ、幸せになるの」
 それが本当のお話だ、とマコトはうれしくなった。

「よかった。ボク、必ずいつか会いに行くよ。大人になってたくさんお金を持って、マッチを買いに行くよ」
「ええ。でもお金はいらないわ。その時にはなにかすてきな童話を特ってきて。そしてわたしに読んでちょうだい」
「うん、ボクたくさんお話を読むよ。全部聞かせてあげるからね」

「マッチ売りの少女」はふわりと石の道の上に浮き上がった。すると、空から白い光が降りてきて、「少女」の体を包み込んだ。

「さようなら! さようなら!」

「少女」は白く光る灯りになって空に上っていく。
 周りを見るといくつもの白い灯りが星の中に昇っていった。

 ああ、こんなにたくさん、あの子を助けたいって思う人がいるんだ。

 マコトはうれしくなった。だから思わず声を上げて笑ってしまった。

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