小説

『マッチ売りの少女とぼく』霜月りつ(『マッチ売りの少女』)

 マコトはずっと考えていた。

 どうしたらあのかわいそうな女の子を肋けてあげられるだろう?

 その子はパパもママもいなくて、いじわるなおじさんの言いつけで、寒い夜にマッチを売っているのだ。
 でもだれもマッチを買ってくれなくて、寒くておなかがすいて、最初に灯したマッチの大の中に暖かい暖炉を、次の火の中にごちそうを、そして最後のマッチの火の中に優しかったおばあさんを見て……、

 そして死んでしまうのだ。

 これはアンデルセンという人が作った「マッチ売りの少女」というお話で、幼稚園で先生がみんなに読んで聞かせてくれた。
 マコトはこの童話にとても腹を立てた。
 そんなのない、と思った。

 マコトはまだ五歳だったけれど、女の子がそんな目にあうことは絶対いけないことだと思ったのだ。

 マコトが今まで読んだお話は、いつも正直で弱い人が幸せになるお話だった。
 テレビでやるアニメだって、ゲームだってマンガだって、どんなに悲しいことが起こっても、最後には主人公は幸せになるのだ。
 怪獣は倒されるし、悪い宇宙人はやっつけられるし、アクマは滅ぼされていじめっ子は味方になる。

 なのにこれはなんてひどいお話なんだろう!

 幼稚園でそのお話を聞いて、ホントはその続きがあるんじやないのかって、先生にも聞きにいって、でもお話はそこで終わりだった。
「どうして!」

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