小説

『マッチ売りの少女とぼく』霜月りつ(『マッチ売りの少女』)

「どうして死んじゃだめなの?」
「だって、」
 マコトはびっくりした。
 どうして死んじゃだめだって? だってそんなの決まってる。死んじゃったら、死んじゃったら。

「ボクが泣いちゃうから!」

 マコトはそう言って「少女」の体にしがみついた。

「ダメなのー! 死んじゃだめなのー!」

 マコトはわんわん泣き出した。
 暖かい暖炉もごちそうもあげられない。
 マッチも買ってあげられない。
 おばあさんにも会わせられない。
「マッチ売りの少女」のしたいことはなにもできない。

 マコトにはなんにもできない。

「ぼくはまだ子供だからお金ももってないし、ごはんも作れない。でも待ってて、大人になったらぜったいマッチを買うから。だから待ってて!」

 「少女」はマコトの体に腕を回した。

「ああ、あたたかい」

 そう言ってマコトをぎゅっと抱きしめた。

「暖炉よりあたたかい。ごちそうよりうれしい。おばあさんより会いたかった」

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